デフォルトゲートウェイの役割と設定方法
みなさん、「デフォルトゲートウェイ」を何故設定する必要があるのか、ご存じですか? また、具体的にどんな値を設定すれば良いのか理解しているでしょうか?
今回は、デフォルトゲートウェイの役割と設定方法について解説します。
まず、この記事が対象にしている人は以下のような人になります。
・デフォルトゲートウェイについて勉強したい
・すぐにデフォルトゲートウェイの意味を理解しなければならない
・何を具体的に設定すれば良いのか知りたい
この記事を読むと次のようなことを知ることができます。
・デフォルトゲートウェイを設定する必要があるのか、ないのか、を判断できる
・設定する場合、何を設定すればよいのか理解できる
ネットワークの設定で「デフォルトゲートウェイ」というキーワードが出てきたのですが、これは何を設定すれば良いのですか?
どんな役割で使われるのか、そもそも理解しないで、何となく設定している人が多いと思います。今回は、デフォルトゲートウェイについて解説します。
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なお、IPアドレス、サブネットマスクについては、以下の記事で解説しています。今回の記事では「ネットワークアドレス」という用語が重要になりますので、よくわからない人は是非、下の記事も併せてご覧ください。
デフォルトゲートウェイの設定が必要かどうかの判定方法
ネットワークを利用する場合、端末には識別情報として「IPアドレス」と「サブネットマスク」を必ず設定します。一方、デフォルトゲートウェイの設定は必須ではありません。
デフォルトゲートウェイは、「設定しなければ通信ができない場合」と「設定しなくても通信ができる場合」があります。設定しないとネットワークが使えない所があったり、設定してなくてもネットワークが使えている所があったりします。このことが、「デフォルトゲートウェイって何なの?」「え? 設定しなくても良いの?!」と思われる原因です。きちんと役割・必要性を理解しておく必要があります。
まず、デフォルトゲートウェイの説明を行う前に、そもそも「ネットワークではどのようにしてデータを送信しているのか」について説明します。
ネットワークでデータの送信が行われると、パソコンは「どこにデータを送信すれば良いのか?」を送信前に判定します。この時に利用される情報が「ネットワークアドレス」になります。
端末同士が通信できるかどうかは、「ネットワークアドレスが同じかどうか」で決まります。
パソコンはネットワークアドレスをチェックし、以下のような処理を行います。
- ネットワークアドレスが同じ場合
- そのままネットワーク上にデータを送信する。送信されたデータはスイッチングハブに送られ、スイッチングハブが目的のパソコンにデータを送信する
- ネットワークアドレスが異なる場合
- 直接送信することができないので、パソコンはデータを設定されているデフォルトゲートウェイに送信する(転送を依頼する)
では、みなさん、以下のネットワークにおいて、端末Aと端末Bは通信が可能でしょうか?
デフォルトゲートウェイの設定は必要でしょうか?
通信できるかどうかを判断する場合、まずそれぞれの端末がどこのネットワークに所属しているのか、ネットワークアドレスを求める必要があります。
端末Aのネットワークアドレスは「192.168.1.0」となります。一方、端末Bのネットワークアドレスは「192.168.1.0」となります。つまり、端末Aと端末Bは同じネットワークに所属している状態です。したがって、この端末間は直接通信が可能となります。
直接通信が可能な場合、端末にはデフォルトゲートウェイは設定する必要がありません。
このネットワークでは、デフォルトゲートウェイの値を設定しなくても、通信が行えます。
ネットワークアドレスの求め方は不明な方は、以下の記事で紹介しています。
次に、以下のネットワークでは通信は可能でしょうか? 端末BのIPアドレスが上の図のネットワークとは異なっています。
この場合も、同じように各端末が所属しているネットワークアドレスを求めます。端末Aのネットワークアドレスは「192.168.1.0」、端末Bのネットワークアドレスは「192.168.2.0」となります。このネットワークでは、それぞれ異なるネットワークが存在しています。ネットワークアドレスが異なる場合、直接通信が行えませんので、このネットワークでは、デフォルトゲートウェイの設定が必要となります。
直接通信ができない場合、端末にはデフォルトゲートウェイを設定しなければなりません。
このように、デフォルトゲートウェイの設定が必要かどうかは、「異なるネットワークアドレスの端末と通信する必要があるか」が判断基準となります。
異なるネットワークアドレスの端末と通信を可能にする場合は、デフォルトゲートウェイの設定が必要です。一方、同じネットワーク内でしか通信を行わない場合、デフォルトゲートウェイの設定は必要ありません。
ただし、一般的には、社内では複数のネットワークアドレスが存在する場合が多く、また、インターネットに接続する場合、インターネット上の接続相手には全く異なるネットワークアドレスが設定されています。したがって、デフォルトゲートウェイを設定することが多いと言えます。
ネットワークで利用される各種機器の役割
次に、ネットワーク内で利用される各種機器について説明します。
ネットワークでは、様々な機器が使用されています。代表的な機器は、「スイッチングハブ」「ルータ」「レイヤ3スイッチングハブ」になります。まず、こららの機器について説明します。
スイッチングハブ(L2SW)
スイッチングハブは、複数のパソコンやプリンタを束ねる「集線装置」です。スイッチングハブを中心にしてパソコンなどが放射線状に接続されることから「ハブ」と一般的に呼ばれます。自転車の車輪を思い出してみてください。タイヤの中心にある回転軸部分に数十本のスポーク(金属棒)が接続されていますが、この回転部分を「ハブ」と呼びます。他には、様々な航空路線が集中し、中継する空港を「ハブ空港」と呼んでいます。スイッチングハブのハブも同様の意味となります。
かなり昔には「リピータハブ」という装置もあり、呼び方を明確にするために「スイッチングハブ」と正式名称を使っていました。しかし、リピータハブには通信速度が遅くなるという欠点があったため、現在ではほとんど利用されていません。したがって、最近ではスイッチングハブは単に「ハブ」と呼ぶようになっています。または、前半部分だけを取り出して「スイッチ」と呼ぶ場合もあります。
ハブに接続できる台数は、ポート数によって決まります。ハブには、有線LANケーブル(ツイストペアケーブル)を接続するための接続口としてポートが用意されています。企業内で利用する場合、多くのパソコンを接続しなければならないため、24ポート、32ポートのハブを利用することが一般的です。ポート数が足りない場合、複数のハブ同士を接続してポート数を増やしています。
ハブの大きな役割は、「端末間の直接通信を行う」ことです。パソコンから送信されたデータは、まずハブに送られます。ハブの内部にはメモリとCPUがあり、受け取ったデータをメモリに一時的に保存し、そのデータをCPUが解析します。実際そのデータをどこの端末に送信すれば良いのかをチェックします。同じネットワークアドレスへの送信だということがわかれば、ハブは直接その端末にデータを送信します。
ハブはどの端末がどのポートに接続されているかを、理解しています。パソコンなどネットワークに接続される端末には、「IPアドレス」の他に「Macアドレス」と呼ばれる識別情報が設定されています。この「Macアドレス」は製造メーカが製造時に設定していて変更することができません。また、設定されている値は世界にたった一つしかない値となります。ハブは、どのポートの先に、どのMacアドレスの端末が接続されているかを内部メモリに随時保存しています。このMacアドレスを使って、ピンポイントでデータを相手の端末に送信します。
ただし、ハブは同じネットワークアドレスが設定されている端末にしかデータを送信することができません。異なるネットワークアドレスへデータを送信する場合、別の装置に処理を依頼する必要があります。
ルータ
ルータは、ネットワークアドレスが異なる端末同士で通信をする場合、データの転送処理を行います。ルータは異なるネットワーク間に設置され、ネットワーク間でのデータの受け渡しを行います。
一般的なルータには、ポートが2つ用意されています。それぞれに別々のネットワークアドレスを設定し、通常ハブと接続されます。つまり、ルータ内部には「2つの異なるネットワークアドレスのIPアドレスが設定」されています。特別決まりはありませんが、大体「254」のホストアドレスが設定されることが多いようです。
ルータはネットワーク間でのデータの受け渡しが行えますが、通常2つのネットワーク間のみが対象となります。3つ以上のネットワーク間でデータの送受信を行いたい場合、有線LAN用のポートを増設するか、別途ルータの台数を増やす必要があります。しかし、どちらの場合も導入費用が高くなる問題点があります。
ルータの大きな問題点は「接続できるネットワークが2つしかない」ことになります。職場内ではたくさんの部署があり、それぞれ個別のネットワークアドレスが設定されている場合が一般的です。3つ以上のネットワーク間で通信を行いたい場合、ルータの数を増やさなければなりません。この問題を解決する機器が「レイヤ3スイッチング」となります。
現在、ルータは「社内(家庭内)のネットワークとインターネット間のデータ送受信に利用」されます。このようなルータを「エッジ(境界)ルータ」と呼びます。
レイヤ3スイッチングハブ(L3SW)
レイヤ3スイッチングハブは、複数のネットワークアドレスが異なる端末同士で通信をする場合、データの転送処理を行います。ルータの欠点を改善し、複数のネットワーク間でのデータ通信を実現しています。なお、この記事の文章内では、レイヤ3スイッチングハブを以降、「L3SW」と表現します。
実はL3SWは通常のハブと外見がほとんど変わりません。見た目はハブですが、内部にルータの機能が実装されています。つまり「L3SW=ハブ+ルータ」と言えます。
1台のL3SWで複数のネットワーク間通信が行えるので、コストが安くなる利点があります。したがって、現在多くの企業のネットワークではL3SWが数多く利用されています。
L3SWで複数のネットワーク間通信を行う場合、転送先となるネットワーク用のIPアドレスを事前にL3SW内に設定しておきます。その後、データ転送処理を開始すれば、自動的に異なるネットワーク間通信が行われるようになります。
一般的なネットワーク構成
以上の説明から、現在企業内で構築されているネットワークの構成例は以下のようになります。
実際は、L3SWやハブの台数は更に多くなる場合がありますが、基本的にルータはインターネット接続用の1台のみとなります。
デフォルトゲートウェイに設定する値
デフォルトゲートウェイを設定しなければならないのか、設定しなくても良いのかは、すでに説明しました。では、実際に設定する場合、具体的に何の値を設定すれば良いのでしょうか?
デフォルトゲートウェイとして設定する値は、ルータまたはL3SWに設定されているIPアドレス
パソコンはデータ転送を行う場合、ネットワークアドレスをチェックし、直接通信できるか、転送依頼するかを判定しています。デフォルトゲートウェイは転送依頼する場合の依頼先の機器のIPアドレスを指定します。
したがって、デフォルトゲートウェイとして設定する値は、社内のネットワーク環境では転送処理を行う機器としてL3SWに設定されているIPアドレスを指定します。また、インターネット接続の場合、ルータに設定されているIPアドレスを指定します。なお、設定する値は、転送先のアドレスではなく自分のネットワークと同じネットワークアドレスを利用しているIPアドレスになります。
例えば、上図内の端末A(192.168.1.1/24)が端末B(192.168.3.1/24)にデータを送信するまでの流れを確認します。
- 端末Aは端末BのIPアドレスを指定してデータを送信する
- 端末Aは端末BのIPアドレスからネットワークアドレスを調べる
- ネットワークアドレスが異なり、直接通信が行えないため、デフォルトゲートウェイの値が設定されているかどうかチェックする
- 設定されているデフォルトゲートウェイの値(L3SW)宛てにデータをネットワーク上に送信する
- なお、この際、端末BのIPアドレスが変更されるわけではない
- 転送先のMacアドレスの値がL3SWの値に設定される
- L3SWは送信されてきたデータを受信し、送信先の端末BのIPアドレスからその端末が所属しているネットワークアドレスを計算する
- ネットワークアドレスが分かれば、そのネットワークアドレスが接続されているポートからデータを送信(転送)する
- L3SWから送信されたデータが青いネットワーク内に接続されているハブに届く
- ハブはデータを受け取ると、端末BのMacアドレスから接続されているポートを識別し、ピンポイントで目的の端末Bにデータを送信する
このような処理が一瞬で処理されて通信が行われています。
デフォルトゲートウェイ「0.0.0.0」(ラストリゾート)の意味
ところで、L3SWやルータにデフォルトゲートウェイの値を設定する際、「0.0.0.0」のアドレスを指定する場合があります。この値は「ラストリゾート」と呼ばれています。
L3SWは社内のネットワーク間での通信を行う際に利用されいます。したがって、どのようなネットワークアドレスが存在しているのか事前に把握することができます。
一方、インターネットに接続する場合、インターネット上には無数のネットワークが存在しています。データを転送する場合、相手のネットワークアドレスが分からないと転送することができません。しかし、インターネットとのデータ送受信を行うルータの場合、インターネット上に存在するネットワークアドレスを管理することは不可能です。インターネット上では新しいネットワークが日々追加されているため、無数のネットワークアドレスを毎日、自前で管理(追加・削除)することは至難のわざとなります。
そこで、利用するIPアドレスが「ラストリゾート」になります。ラストリゾートの「0.0.0.0」は簡単に表現すると「その他大勢のネットワーク」となります。通常、ラストリゾートの転送先はプロバイダのIPアドレスとなります。実は、プロバイダはインターネットに接続されているネットワークアドレスを管理しています。そして、プロバイダ各社がお互い管理しているネットワークアドレスの情報を共有しています。
企業内の端末がインターネットに接続する場合、ルータは転送依頼を受け取った通信をラストリゾートが設定されているプロバイダに転送します。実際のインターネット上でのデータ転送は、その他のプロバイダが行ってくれます。
まとめ
今回は、デフォルトゲートウェイの役割と設定方法について説明しました。
・ネットワークアドレスが異なる端末にデータを転送する時にデフォルトゲートウェイの値が利用される
・デフォルトゲートウェイはL3SWやルータに設定する
・「0.0.0.0」は通常、プロバイダのIPアドレスを指定する
いかかでしたか? デフォルトゲートウェイの値もネットワークでは重要な情報のひとつです。その役割をきちんと理解して、ネットワークに関する知識のレベルアップを目指しましょう!!
ネットワークは目で見て確認することができないので、理解するがすごく大変ですが、きちんと復習します。
基本情報技術者試験の午前問題のうち、IPアドレスに関する問題を集中的に解説している記事がありますので、是非合わせて確認してみて下さい。