30代、40代の未経験者がプログラマの仕事に就職・転職できるでしょうか?
インターネット上やYouTubeでも、同じような内容の記事が投稿されています。
その多くが、「未経験者なら、30代でも”ほぼ無理”。遅すぎる」という結論です。
しかし、可能性は「ゼロではありません」
私はセミナー講師として、多くの講習会を担当してきました。その中には、未経験者がプログラマに転職するための講習会もありました。
実際、この5年間で100人以上の未経験者の転職をサポートしてきました。ほとんどの人は、プログラマやインフラエンジニアに無事転職しています。もちろん、30代や40代の人も含まれています。
半分近くは、30代の未経験者です。
したがって、私の意見としては、「30代、40代の未経験者でもプログラマへの転職は十分可能」ということです。
ただし、それなりの問題点や覚悟が必要です。
今回は、少し志向を変えて、転職に関する話をしていきます。
30代、40代の未経験の方でも、プログラマへの転職は十分可能です。
しかし、実際は厳しいことも理解しておきましょう。
プログラマの仕事の分類
「プログラマの仕事」とひと言で言っても、実は様々な仕事があります。実際に、どの仕事を目指すかによって転職できるかどうかが変わってきます。
代表的なプログラマの仕事は、以下のものがあります。
- Webプログラマ
- SES(客先常駐:派遣)
- 自社開発、受託開発
- 組込みプログラマ
それぞれの仕事について、簡単に説明します。
Webプログラマ
お客さんの要望に合わせて、Webサイトを作成する仕事です。正確に分類すると、「フロントエンド(クライアントサイド)エンジニア」と「バックエンド(サーバサイド)エンジニア」に分けられます。現在、多くの企業は自前でWebサイトを所有しています。しかし、自社では人材や技術がなく、外注することが多くあります。その仕事を請け負って、代わりにWebサイトを作成します。
フロントエンド(クライアントサイド)エンジニア
ユーザが実際目にするホームページを作成します。HTMLやCSSを駆使して見た目がきれいなページを作成するだけでなく、JavaScriptを用いてスライドショーなどページに動きを付け加えたりします。
この分野は非常に技術進歩が速く、少し前なら、まずは「jQuery」と言われていましたが、現在は「React」「Vue.js」などが必須と言えます。とにかく、常に新しい技術の習得を行わなければなりません。
バックエンド(サーバサイド)エンジニア
Webサーバ上で実行されるプログラムを開発します。PHPやRuby、Javaなどのプログラム言語を駆使して、ホームページを動的に作成します。
みなさんがショッピングサイトで商品名を入力すると、関連する商品が一覧表示されると思います。その仕組みを提供しているのが、この仕事です。Webブラウザで入力された商品名がWebサーバのプログラムに送られ、その商品名に該当するデータをデータベースから取得します。その結果をHTML形式に変換し、ユーザのWebブラウザに返します。
したがって、求められる知識は、HTML、CSS、JavaScriptの他にプログラミング技術とデータベース操作(SQL処理)など広範囲になります。
フロントエンドエンジニアと比べると、技術の進歩はそれほど早くはありません。一度習得したスキルはそのままずっと活用することができます。
SES(客先常駐:派遣)
プログラマの半分以上は、このSESの仕事をしていると言われています。入社した会社から、他の会社のシステム開発(プロジェクト)に派遣されてプログラムを作ります。一般的には、業務系のシステムを開発する場合が多いと言えます。業務系システムは大規模なので、開発が長期間となり、派遣期間も併せて長くなります。しかし、プロジェクトによっては、数カ月で完了する場合もあります。完了した場合、他の会社のプロジェクトに改めて派遣されます。
社員を派遣すると、派遣した社員のスキルに応じて相手企業からお金が支払われます。SESで働く社員が給料をあげたければ、自分の価値を上げる必要があります。経験が一番効果的ですが、資格を取得することによって、自分の価値を上げることもできます。
この客先常駐では、派遣先が変わると、あたらめて人間関係を築かなければなりません。したがって、他人とコミュニケーションを取ることが不得手な人は心身的に大変となります。また、案件が変わると違った言語を習得しなければならない場合もあります。
一方、派遣先が変わると一緒に働く人が変わるので、人脈が広がるという利点もあります。場合によっては、派遣先でヘッドハンティングされる可能性もゼロではありません。また、新しい言語を習得するということは、自分が成長できるということにもなります。自分の価値が向上します。
この仕事は、あなたの性格次第で、良くも悪くもなります。
自社開発、受託開発
自社で何らかの製品を開発して販売している場合、自社内でプログラムの開発を行います。また、他社のシステムを開発する場合でも、相手の会社に派遣されません。気心の知れた社員と一緒に仕事ができるので、ストレスなく仕事ができます。
自社内のスキルの蓄積を目指して、客先常駐から自社開発に舵を切る会社も多くなっています。
組込みプログラマ
家電製品などの制御を行うプログラムを開発します。マイコンと呼ばれる装置を制御するために、C言語のスキルが必須です。家電製品は常に新製品が発売されています。新しい製品を開発・提供する場合、何か新しい機能を追加する必要があります。全く前の製品と同じものは、顧客に購入してもらえません。つまり、新製品が提供され続ける限り、組込みプログラマのニーズは常にあります。
ただし、プログラムの技術だけではなく、マイコンや電子回路の知識も必要となります。
30代、40代の未経験者にとって転職するのが難しい仕事
プログラマの仕事を簡単に説明してきました。これらの中で転職するのが難しい仕事はどれでしょうか?
「30代以上の未経験者がプログラマの仕事に転職するのは、ほぼ不可能」と話している多くの方は、その内容をよくよく調べてみると、「Webプログラマ」を指すことがほとんどです。「30代ですがプログラマの仕事に転職できますか?」と質問している人も、だいたい「Webプログラマ」を意識しているようです。
Web業界は、華やかなイメージがあり、就職や転職を希望する人が多いと言えます。ただし、サイト作成は開発期間が非常に短いため、求められる人材は「即戦力」です。会社のホームページを公開するのに「1年後に完成します」と言われたら、みなさんはその会社にサイト作成を依頼しますか?
採用する側も採用後にゆっくりと研修などで人材を育成する余裕もありません。したがって、未経験者がWeb業界へ就職、転職するのは、かなりの努力が必要です。
Web業界へ就職、転職する場合、「必ずポートフォリオを作りましょう!!」と言われます。これは、自分がどれだけスキルがあるか、即戦力として使えるか、をPRするものです。
Webプログラマ以外の仕事が、簡単に就職、転職できる訳ではありません。しかし、Webプログラマのプロジェクトと比べると、納期までの期間に余裕があるので、未経験者を採用しても研修させる余裕があります。
客先常駐の仕事でも、未経験者が採用されて、すぐに一人で現場に行かされることはほとんどありません。通常は、複数の社員が参加しているプロジェクトに派遣され、サポートを受けながら仕事をしていきます。ただし、テスター(作ったプログラムや製品が正しく動作するかをチェックする仕事)の場合、手順さえ覚えればよいので、いきなり単独で派遣される場合もあります。
30代、40代の未経験者がプログラマの仕事への転職が難しい3つの理由
どの業界への就職、転職も厳しいのが現実です。特にプログラマの場合、専門的な技術があるかどうか、も大きな要因となります。しかし、実際には、他にも転職を難しくしている理由があります。
給料が大幅に下がる可能性が高い
未経験者に高額の給与を支払う会社は滅多にありません。つまり、給与が前職と比較すると大幅に減少する場合がほとんどです。実際、どれ位になるかというと、大まかに言って、全くの未経験者は年収200万円がスタートだと考えてください。もちろん、未経験者でも自分で勉強してスキルを身に付けていれば、多少の増加は見込めます。
まず、30代、40代の未経験者がプログラマの仕事に就職、転職できない大きな理由は、この給与が大幅に下がることが受け入れられない、ということになります。もちろん、家庭の事情もあるので仕方ない部分はあります。
逆に30代、40代の未経験者がプログラマの仕事に何としてでも就職、転職したいと言うなら、給与が減少することをあきらめるしかありません。
常に勉強し続けなければならない
プログラマの仕事は、常に勉強が必要です。自宅に帰っても勉強している人が多いのが現実です。仕事が終わって家に帰ってまで仕事に関係する勉強を行うことの是非については、インターネット上で数多く議論されています。正解/不正解、当たり前/理不尽、色々な意見があると思います。しかし、現実は勉強しなければなりません。未経験者の場合、スキルアップするためにも勉強が必要です。
自分は勉強するのが嫌い、という方は残念ながらプログラマの仕事には向いていないと思います。今まで、仕事が終わって家に帰ったら、気ままに過ごしていただけの人にとっては、プログラマになって常に勉強するのは苦痛かもしれません。
30代、40代の未経験者でも、日ごろから積極的に勉強し、スキルアップに励んでいることを履歴書や面接でPRできれば、会社は評価してくれると思います。
自分より年下の上司が周りに多くなる
これもインターネットでよく言われていることです。特にWeb系の会社は若い社員が非常に多くいます。20代で課長に就いている人もザラにいます。その環境の中に30代、40代で入社して、うまく人間関係が築けますか? というのが会社側が抱く心配事です。若い管理職が入社した30代、40代の社員に気を使っては、仕事がうまくまわりません。
特に40代の人は前職でも、それなりに責任のある仕事をこなし、役職も与えられていたかもしれません。つまり、プライドを持っているはずです。
それが、プログラマで転職をすると、全くスキルがないので、自分より若い同僚に色々と指摘されるようになります。そんな時に素直にその指摘を受け入れられるかが重要です。でも、実際はプライドのため難しいと思います。
プログラマで就職、転職する場合、自分より年齢の若い人がたくさんいることを肝に銘じておく必要があります。
30代、40代の未経験者がプログラマの仕事に転職できた人の多くは、非常にコミュニケーション能力が高い人たちです。若い人の意見にも真摯に耳を傾け、積極的に会話をしています。
転職者の強み
未経験者がプログラマの仕事に転職する場合、会社が求めているのは、あなたの「過去の経験」です。確かに未経験者にはプログラマのスキルはありません。大学、専門学校を卒業してすぐにプログラマになった人と比べれば、10年以上ハンデがあるかもしれません。しかし、プログラマはお客さんの要望、問題を解決するシステムを作るのが仕事です。大事なのは、お客さん目線でいかにシステムを開発できるかになります。
例えば、あなたが介護関係の仕事を今までしていたとします。今度、会社で介護関係のシステムを開発する場合、若いプログラマは介護業界について全く知りません。知らなければ、本当にお客さんのためになるシステムが作れるかは疑問です。一方、プログラムのスキルは低いものの、あなたは前職で介護業界を知っています。その知識は非常に価値があります。
プログラマに転職する場合、プログラムのスキルだけに固執せず、今まで自分が経験してきたものとプログラムを組み合わせて、新しい価値を生み出すという発想を持つと良いかもしれません。
まとめ
今回は、30代、40代の未経験者がプログラマの仕事に就職、転職できるか? について説明してきました。実際、現場で働いている人から見れば、「違うよ~」と思われる部分があったかも知れません。あくまでも、私の今まで経験してきた結果の話です。実際に未経験者にプログラムの知識を教え転職させた実績、また、採用する会社の担当者に聞いた話をもとにしています。
インターネットでは、30代以上の未経験者がプログラマになるのは、無理という話が多いですが、私は全く逆の意見です。「30代、40代の未経験者でも可能です!!」。ただし、諦めなければならないこと、頑張らなければならないことが、たくさんあります。
それらのことをクリアして、初めて「未経験者でも可能です!!」ということになります。
「何の犠牲も払わずに、簡単に未経験でも転職できる!!」という裏技は存在しません。
自分の夢・目標を叶えるのは、自分です。また、自分の夢・目標を潰すのも、自分です。
人生は一度しかありません。あれこれ考えるよりも、ぜひ実行に移してください。
自分の人生は、自分で何とかできます!!
プログラマは誰かの問題を解決する、やりがいのある仕事です。
希望する人は、熱い情熱をもって、頑張ってください